百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座 夜の部

ロビーで富司純子さんを見かける。顔もきれいだが、首きれーい!年齢を感じさせない…すげえ…。
というわけで、本日は菊五郎劇団を中心とした芝居ですが、NINAGAWAが歌舞伎初挑戦ですよ!シェイクスピア原作。しかも主役は菊之助。もう、前からずっと楽しみにしていました。

幕が上がるとミラー張りの舞台。上部から桜が下がって、小さなチェンバロにも桜が描かれているという、幻想的な道具立てです。我々の席は3階正面でしたが、そこから見下ろすと、1階客席の赤い足元灯がゆらゆらとミラーに映りこんで、気分を高めます。
開演後すぐ、地震。でかっっ!老朽化してる歌舞伎座、特に中空に張り出す形の3階4階は、揺れます。悲鳴の上がるなか、顔色も変えず、台詞を途切れさせることもなく、信二郎の恋の独白が続く。子役も少しフラッとしたものの、表情には出さず、持ちこたえる。役者ってすごい…。いやホント今、怖かったよマジで?少し揺れがおさまって、その落ち着き具合に対しても拍手と声援が飛ぶ。
独白の後は、場が転じて海上、巨大な帆船の舳先に菊之助段四郎が丁度よい位置に控えている。ほどのよい役者だなあ。この船は嵐で遭難するのですが、水夫が船上で転げたり、落ちかかったり。役者が危うい体勢のときに地震が来なくて、ほんとよかった。
次の場はお屋敷。ベースは歌舞伎おなじみのお屋敷ですが、背景はやはりミラー。欄干や襖絵はアールデコ。不思議だけど、これ、合うわ。いい舞台美術だなあ。
左團次亀治郎のコンビが素晴らしい。大人で、遊び心があって、人生を楽しんでいて、適度に意地が悪くて、その悪さも行き過ぎない。こんなキャラクターはなかなか、歌舞伎には出てきませんね。しかも歌舞伎として不自然ではない。
赤姫を気高く演じる時蔵、この人も見事。わあ、いるいるいる、こういうお姫様!!菊之助が後に勝頼の衣装で出るけれど、そういえば八重垣姫と似ていなくもないキャラですね。抹香臭いところから一気に恋にメラメラ燃え盛る女になるところなど。
権十郎も良い。だんだん大きくなるなあ、この人。襲名は正解でしたね。
松緑がいい!これほどコメディが上手だとは思わなかった。勘九郎より面白いんじゃないか?今後この手の役でもどしどし出ていただきたい!
ある意味で道化2役を両立させた菊五郎も、良い。やっぱプロだわ。この人の存在感で、芝居がいっそう締まる。

それにつけても亀治郎はつくづく頭がいいんだなあ。それによく糸に乗っていて、つまり体もいいわけだ。ってカンペキじゃん。大きさはまだ、無いけれど…クレバーで骨惜しみしない役者は応援しなきゃ!と思うのです。惚れ直して、ブロマイドまで買ってしまいましたよ(^^;
ほかにブロマイド買ったのは時蔵、そしてやっぱり菊之助。でも菊之助のはアップでなく、段四郎とのツーショットを。こんな構図、滅多に見られないもの。

それと、今回の舞台美術は、私は大変、好きです。金子さんという方が組んだのね。すごい。
全場面にミラーを使っていて、奥行きだけでなく倒立や二重写しといった芝居の台本そのものへの積極的な絡みもあるのでしょう(360度で見られる役者のプレッシャーは大変でしょうが)。お庭の誇張表現、広重の画の使い方(この広重のは他の舞台でも使えないかと思ったぐらい気に入った)、要所要所に入る花やアール。大胆で幻想的で、シンプルでいて細やかなところに凝っていて、大変よかったです。

今回は初演ということもあって、甘いところは沢山あったのでしょうが、全体としては、満足できる芝居でした。何度か再演し、演出も台本もいろいろと試行錯誤して、残って行ってほしい作品となったように思います。『野田版研辰』も面白いのですが、あれは勘九郎の個性があってこその芝居です。この『NINAGAWA歌舞伎の十二夜』は、今回の配役はベストに近いとまで思いましたが、それでも他の役者でも観たいと思わせるものでした。

よい芝居でした!
歌舞伎の未来は、まだまだあるな!!


以下、7/24夜追記。ついでに劇場で買ったチョコレートの写真など追加(^^)
一人二役で吹き替えの人が出るのはよくあることですが、通常は顔などあまり見えないように演技します。今回は菊之助の仮面が登場!場内がどよめきました。あれ、本人からマスク型とったんだろうな。劇場で販売したら売れるだろうねー。
チョコは、中身は毎月売ってるものと同じですが、特別パッケージと称してCDケースみたいのに入って、わずかにお高くなってました。うわーたかがこんだけのケースでボるなあと思いつつ、つい買ってしまいました…やられたぜ。