百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座 夜の部

先週予定していた昼の部は風邪で断念。夜の部は楽しみにしていた金閣寺もあり、ワクワクですだよ。ということで私にはこれが初芝居です。

  • 廓三番叟

雀右衛門、お疲れのご様子ながら、「美しく、そこにある」ということがいかに重要かを思い知らされました。
孝太郎の新造、とてもいい。お行儀のいいところと、ここ最近の色気とが、まさにこの役にちょうどいい、ぴったりのところで踊っています。体もよく動く。顔のこしらえもよくなってきた。それと、これは演技力とは関係ないところで、雀右衛門が小さい人なので、その新造として孝太郎の身長のバランスがいい。舞台の構図がスッキリ見えたのは、全体に背の低い人が出ていたこともあったかと思います。
富十郎は流石の安定感。魁春芝雀ともに手堅く、見ごたえのある三番叟でした。

前回見たときは、たしか途中で寝てしまったんですよね…不覚。
幸四郎吉右衛門の共演、玉三郎の雪姫…と、見所いっぱいの金閣寺。私としてはこれが本日の一番のお目当てだったのですが、隣の席の人はもっと極端で、金閣寺が始まる頃に着席し、金閣寺を見終わったあとはずっと空席でした…あららららー。
で、その見所の三人ですが、やはり抜群は玉三郎。か、完璧です。脱帽。まず動きがいい。声がいい。一時期声が荒れていたと思うのですが、すっかり可憐で理知的な姫の声になっていました。このお姫様はつまり「自分で考えて行動し、自力で奇跡を起こす」歌舞伎には珍しいお姫様なんですよね。迷いながら、泣きながら(これがもうほんとうに痛々しかった!)、身悶えながら、緊縛の残酷美(笑)を見せつけながら、それでも考え行動し続ける雪姫は、きっと好きな人多いんじゃないかな。そりゃー幸四郎演じる大膳(大悪)も、惚れるわけだよw

  • 鏡獅子

勘三郎の弥生…あららとってもいいじゃありませんか。手踊りが、特にいい。ピラピラしていない、ヒラヒラしている。たいしてぱっとしない(笑)お小姓が、踊り始めると行儀を崩さないながら次第に我を忘れ、踊りに取り込まれていくかんじ。
獅子になってからもいい。張り切っていて軽やか、なのに重量感がある。型どおりなのに自由な獅子です。数えていたら毛振り、30回は回していました。流石にその直後の幕切れでは辛そうでしたが、場内歓声、大拍手!

  • 切られお富

この演目、初見です。福助が実に嬉しそうにお富をやってまして…ああーずっとやりたかったお役なんだろうなあと想像しました。
高麗蔵が上出来。女郎屋のおかみ、完全にカタギでもないけれど悪党でもない女の良さがありました。
蝙蝠安の弥十郎(旧字すぐ出ません、ごめん)も面白そうにやってます。小悪党をやるとき嬉しそうな役者って、見ているほうもなんとなくウキウキとするんですよね…なぜだろうか。
お富と蝙蝠安との立ち回りの途中でチョンが入り、役者が並んで「とざい、東西。まず本日はこれぎりィ…」好き好きもあるとは思いますが、私、この幕切れ好きなんです。あー、芝居見たなーって。