百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座 夜の部

しばらく書かないままにしてしまいましたが、えー、歌舞伎には毎月ほそぼそと行ってます…たまには真面目に感想など…。
で、昨日行ってきました歌舞伎座

  • 御浜御殿

芝雀は、どんどん若くなるなあ。が、第一印象。なんたる可憐(文法変ですか)。仁左衛門の綱豊卿の「いつまでも町娘などのようにうきうきとしておれよ…」という台詞が説得力を持つ。当人は決してうきうきと暮らしているつもりはないけれど、それでも周りに明るさ若さ華やぎを振りまく人柄という感じがよく出ていました。
染五郎富森助右衛門、懸命さを全面に出して、上出来というべきでしょう。…ちょっと寝ちゃってごめん。

  • 加賀鳶

幸四郎吉右衛門、なんだか最近よく組むなあ。幕が開いてすぐの鳶の頭同士としての対決(ではないがそう見えてしまう。しかしここまで扮装が似ると、顔の相似がよくわかる。また、似ているからこそ違いが強調される…)、軍配は吉右衛門かと。幸四郎に鳶はどうも似合わないですな。
道玄になってからは幸四郎、腹に一物ある悪人にピッタリ!面白く拝見しました。ちょっと説明くさいのも、役柄的に今回はアリでしょう。
宗之助はいつまでも十代の趣。まだまだ先が長い。種太郎さんは見る見る大きくなってしまって、今月は妻恋音吉。花道での台詞のときに、いきんで肩が上下してしまうのは、今後もう少しよくなるのでしょう。芦燕の雷五郎次、あの形、あの顔(うう強そう)、出てると雰囲気がぐぐっとよくなる役者ですねえ。

染五郎の静と知盛、幸四郎の弁慶。芝居としてはどうなんだろう、成功とは言い難いのではないか。
ちょっと弁慶が出すぎのように感じたのは舞台のバランスが悪かったから。今回はしかし弁慶でも頑張らにゃ仕方が無い状況だったのかもしれません。
いままで何人かで静と知盛(一人で演じ分ける)を観たけれど、今回初めて、静って難しいんだなあと実感。てことは、いかに今までの役者がその難しさを感じさせないように演じてきたかということで、これはひょっとしてすごいことなんではなかろうか。
静の舞は、振りにこれといった特徴も盛り上がりも無く、しかし前半は能舞を意識し後半は長唄舞になる、踊り分けの難しい曲なのですね(って聞いたことあったけど納得したのは今回はじめて)。長唄舞は流石に踊りの上手ですが、能舞は…特に瑕疵があるわけでもないけれど、どうもなりません。慣れもあるだろうし、向き不向きもあるのでしょう。どうにも染五郎に合ってない。謡も聞きづらい…声の調子を崩していたようだけど、それだけじゃない、女方を意識しすぎて腹から出ていないかんじでした。ビジュアルがきれいなだけにちょっと辛かった。
知盛になってからは勇壮で、緩急もキレも素晴らしく、大奮闘。途中、薙刀の壊れるハプニング。最後の引っ込みも素晴らしい。終わりよければ全て良し…と言いたいところですが、今後更なる経験を積んで、またの挑戦を心待ちにします。つか若手中堅の挑戦は大歓迎だ。次は亀治郎あたりやってくんないか、きっとすごくいいぞ。