百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座 夜の部

パーティーのあと、みなさんに別れて迅速に銀座へ移動。板東玉三郎Presents、泉鏡花Night。みたいな。
最高気温、ところによっては38度!だったらしいのですが、着物の方もけっこうたくさんいらっしゃいましたね。うう。なんかこう、敗北感。リベーンジ、夏着物。

  • 山吹

初見です。縫子の笑三郎が好演。辺栗の歌六がインタビューで「今月の演目のなかでは唯一、現実界の人間ばかり出てくる芝居ですが、さっぱりわからない。人間が一番わからないということか」みたいなことを答えていました。ほんとうに、しんそこ人間が不思議だったんじゃないかと思う、泉鏡花は。

2度目。映画も入れれば3度目です。舞台演出上は今回が一番素晴らしかったと思いますが、亀姫は春猿には、ちょっと難しかったかも…というか、相手が悪かったというか。玉三郎丈の醸し出す本気で異界の住人な雰囲気に比べられてしまう位置関係の姫なので。映画の宮沢りえ、前回の菊之助と比べてしまうと、少しずつ何かが物足りなかった。
図書之助の海老蔵は予想通りの好演。しかしそろそろシャープな若侍のかんじが薄れてきているような気も。ふっくらしたから、だけではないと思う。富姫の玉三郎がうっとりともらす「すがすがしいお言葉!」とかに客席が笑ってしまっていたのですが、いや、大時代な少女漫画みたいな台詞なので無理は無いんだけど、これを笑わせないだけの清清しさの説得力が欲しかったなあと思いました。
予想外の出来だったのは舌長姥の門之助!びっくりしました。すばらしい。ことさらに小さな人ではないはずなんだけど、体の大きさまで変わっていて、まるで骨を自在に縮められるみたい。それが、「うまやの…むさやの…うまやの!」と、生首にかじりつこうとしたときに、うわっと体が膨らんだように見えて、たしなめられてもとの大きさに戻る。役者の凄さを端的に垣間見たように思いました。
近江之丞桃六の猿弥。ビジュアル的にも福々しく、まことにおおらかな桃六でした。いいじゃんいいじゃん。
そして玉三郎は…観る度に凄みを増します。
さきほど配偶者に言われて、改めてそうだなと思ったのですが、音楽は映画と同じだったのですね。ベストな音だと思います。
映画よりも舞台に向く脚本だと思う。一見、映画のほうがCG使えたりカメラワークがあったりで自由度が高いようですが、舞台の上には無限の異世界が出現するのですね。堪能しました。