百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座

明日は某大企業子会社の適性試験、明後日は能に行くので、今日を逃しては歌舞伎のことが書けなくなりそう。
というわけで、先週末、歌舞伎座に行ってまいりました。昼夜ともおなじ『NINAGAWA十二夜』。
前回の観劇日記はこちら>http://d.hatena.ne.jp/kirinsha/20050724/1122137821
ほとんど前回と同じ配役。こちらもほぼ同じ3階正面の席で。若手、中堅、大役者問わず、いやおそらく囃子方裏方さんまで、いずれもがこの芝居に慣れ、工夫を重ねて練り上げてきたことに驚く。歌舞伎はどうしても新作が少なく、あっても初演はともかく再演で満足することはとても難しい…が、この芝居はそれをやってきた。事件と言ってもいいほどの出来事だと思います。
まずは信二郎改め錦之助、前回は丁度台詞の途中に大きな地震があって、いささかも動じない役者魂に「こんな役者だったっけ?」と思ったものですが、今回は、前回には無かった(ごめん)華があって、なによりの出来。襲名は人を変える。良いほうに変わってゆく錦之助、今後も楽しみな役者です。
それから亀治郎、思う存分ふざけて力いっぱい舞台を駆け回って、若さ全開!大河ドラマ実はあんまり見てないんですが、まあ性別から性格から間逆なお役で、楽しかったんだろうと思います。それで客も喜ばせるんだから、お見事です。
そして(もはや愛する、と申しましょう)菊之助、この役はもう、今のところ、彼をおいては考えられませんね。良い役を得たものです。そもそも、はじめて私が彼をきちんと認識した丑之助時代のお嬢吉三から、彼の両性具有性は他の役者を圧していたのでした。そして前回には無かった余裕のようなものを、舞の場面など随所で感じられました。役を自分のものにした自信が彼を更に輝かせたのだと思います。まもなく公開の映画『怪談』も観たいなあ…。
若手ばかりでなく、名人上手も…時蔵の赤姫、一層、鮮やか。このたびは高貴さ強さばかりでなく柔らか味や色気も出て、典型でない、歌舞伎の赤姫なのにきちんとその個性のあるお姫様でした。同年代で、翫雀のたいそう気持ち悪いwお公家さんも、効果的。これは彼がやって正解でしたね。おっとりと育ちがよくてしかも下世話なところ、落語の与太郎の上流版なり。左團次は前回に比べ格段の自然体。地じゃなかろうか(笑)。そして大御所菊五郎。実に実に楽しそうにやってました。前回よりはじけっぷり五割増し。ブロマイド売り場では上一段すべて菊五郎だったのですが、その半分が「こ、この写真売っちゃったら今後の二枚目な役に差し支えませんか…」というような、どうにもひどい(褒めてます…)格好なり、ご面相なり。ついつい、いちばんひどいのを買ってしまうww
大道具小道具に散りばめられたミラーもアールデコなモチーフも同じですが、これもどこやら洗練された印象。道具替えもスムーズ。慣れもあるだろうし、すんなり替えられるように演出も工夫したのでしょう。
この芝居は強いと思う。今後、何年後かの夏、役者が同じでも替えてきても…ぜひまた上演されますように。

追記:7/28向月台についての記述削除。前回の写真見たらおんなじかんじだった…一見ミラー張りにも見える写真なので、どっかで記憶が入れ違ったらしい。すみません<まったく観察できてないな私(^^;