百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座 昼の部

9月の昼の部の感想を書かなくては…と思いつつ、気付いたらもう10月も半ば。土曜日に、「芸術祭十月大歌舞伎」昼の部に行ってまいりました。

  • 赤い陣羽織

木下順二作。私の苦手な新派っぽいやつか…と、ちょっと横目で見ていたのですが、なかなか面白かったです。女房役の孝太郎が、情があり、華があり、可愛さあり、おかしみあり。女優がやったらこんなふうにはならないと思う。歌舞伎役者だからこそ。こんな女房、私も欲しい…ww
ほかに、お代官の翫雀、決して善なる人間ではないのだけれど、なんともほのぼのとした味わい、かすかな哀感。

  • 恋飛脚大和往来

「封印切」と「新口村」。藤十郎ますます冴える。鮮やか。封印を切るくだりをはじめ、比較的あっさりめにやった感じだけれど、これがいい。時蔵の梅川もこっくりとした深い色気があって、ちょっと圧倒されるご両人でした。義理と人情、と一言に言えば何となく聞き流してしまいますが、まさに義理からも人情からも、どうにも追い詰められていくところを存分に見せたあとの、二人の雪中の逃避行は美しく哀れ。堪能しました。
三津五郎の八右衛門、お金持ちのボンの意地悪い感じが出ててよかったけど、いささかいい男すぎないか。もうちょっとねっとりいやらしく憎たらしくやってもいいかも。秀太郎のおえんは文句なし。またこの人で観たいと思います。我當の孫右衛門、気骨と情味があり、動きも声も秀逸。こういうお役ができるとは…意外な発見をした気分。

  • 羽衣

最近、能づいている玉三郎。もちろん踊りも姿もいいのですが…どうも歌舞伎で「能らしいもの」を見せることについて、しっくりこない感じがある。今まで観たことないからたぶんこの演目のために玉三郎が新調したのかな?と思われる衣装は、能の雰囲気を残しつつ、また歌舞伎の従来の着付けに沿いながら、現実にはあり得ない天女の姿を的確に視覚化したものと好感を持ちました。踊りもそれなりに優雅で天女の雰囲気を伝えます。…でも、それだけなんじゃなかろうか。
愛之助は今回はちょっと割を食ったか?ちゃんとやっていたと思うのですが、美点が見つからない…非常に残念。