百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

どんな日本でいましょうか

ここんとこ読んだ3冊の感想。『金春屋ゴメス』『女装と日本人』『なぜ日本人は劣化したか』でお送りしまあす。んっがぐっぐ。あっ、これだと終わっちゃうか。終わりませんはじまります。

  • 『金春屋ゴメス』

いやあ面白かった。あのう、私は江戸時代の江戸が大好きなのですけど、一生江戸に住みたいーと思っているわけではないのですね。そこを上手に擽られるファンタジーとして読んでも面白いんですが、バイオハザードを絡めた近未来小説、SFとしてよく出来ていると思うのです。江戸の問題点を突いて可能な限りは解消している(肉食OKとか女でも家督を継げるとか)けれど、化学を持ち込まないで3世代を経たワンダーランドが現代(いや近未来)日本と接点を持っていることで、どんな世界であり得るのか。ユートピアってなんなのか。そんなことも考えてしまう、いやでもやっぱり、この江戸はなかなかいいなあ。

  • 『女装と日本人』

読了して暫く経ってしまいました。やや筆致は固め。基本的には文化史の紹介、社会史の紹介なのだけど、私が最も知りたかった、トランスジェンダーは病気ではないと著者の考える根拠が、丁寧に文化史を積み重ねることで、無理なく納得のいくようにできています。ほんとはもう少し踏み込みたかったのではないかなあ。このテーマで、ここまで書き込んで、新書・・・厚いとはいえ400ページ無いです。いや私も実際、新書だったから買ったので、単行本だったらちょっと考えたかもしれないけど、いやでもやっぱり、勿体無い!本来かなり複雑な考察を経て辿りつくはずの、例えば絵に描かれた人物が稚児であるかどうかの判断について(おそらく当時の社会背景についてはもっと説明があるべき)や、男娼の移動の過程など・・・無理に削ったのではないか。一度新書で出したものに訂正加筆って難しいと思うけれど、できたら、この本がうんと売れてくれて、文庫化されるときに是非、加筆を希望いたします。こういう本を買って読む人間は、たぶん、そこそこ長大な、複雑な議論であっても、きっとついていけますよ。

  • 『なぜ日本人は劣化したか』

危機感についてはひしひしと伝わってくる。ちょっと例に挙げる対象を広げすぎたのでは・・・問題提起にはじまり、同じ問題提起に終わるという構成には感心できません。「寛容」ということがひとつのキーワードにはなっているようです。

思えば、これら3冊とも、日本と日本人について、それぞれの視点から考えているのですけど、幸福に生きるという点で寛容性に着眼しているのは共通しているのではないかと。私たちはもっと辛抱強く粘り強く、好奇心をもって生きられるのではないかしら。その方法のひとつが「寛容」にあるのではないかしら。新しいものを作っていくには、新しいものを許容する余裕が必要ですものね・・・そんなことを、思いました。

金春屋ゴメス (新潮文庫)

金春屋ゴメス (新潮文庫)

女装と日本人 (講談社現代新書)

女装と日本人 (講談社現代新書)

なぜ日本人は劣化したか (講談社現代新書)

なぜ日本人は劣化したか (講談社現代新書)