百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

歌舞伎座 昼の部 夜の部

ひさしぶりに書きますが、昼の部は一週間前、夜の部は土曜日に行ってきました。感想といってもざっと、おおまかなところで。
歌舞伎座は「さよなら公演」と銘打ってから、はじめて来る方も多く見受けられ、なかなか盛況です。今回も売店で、知人に連れてこられたらしきおじさまが、人にもまれながら、「ちょっとしたテーマパークだねえ」なんておっしゃってました。そうなのです、歌舞伎座は単に舞台機能だけではないのです。このテーマパーク感が、うまいこと残るかしら・・・不安。

昼の部は通しでした。
花水橋、橋之助の浮世離れたお殿様っぷりが素晴らしい。
竹の間と御殿で特筆すべきはやはり、久しぶりの玉三郎仁左衛門の政岡・八汐。一度見た組み合わせではあるけれど・・・玉三郎はお手前がお見事。仁左衛門の八汐、会場がざわっとするほど、不吉な醜女、悪のオーラ。沖の井と松島に福助と孝太郎。どちらも抑えた良い演技でしたが、殊に孝太郎の強く前に出る演技が、いままでにない美しさを感じさせて、はっとしました。
それにしても歌舞伎の子役は、なんと健気にまたやすやすと死んでいくのか。あれほどリアルを廃した台詞まわしであるのに、涙がこぼれます。
床下では鼠が大ウケ(笑)。いつもより多く回っておりますというかんじで、後の吉右衛門につなぐまで、場内を逸らしませんでした。

  • 毛谷村

ここから夜の部。
ひさしぶりに拝見、と思ったら5年ぶりですか。このお芝居は、それほど好きでも・・・と思っていたのだけど、いま観るとなかなか面白い。
吉右衛門の愛嬌全開。「おしーしぱーくぱーく」は、たぶん現代の幼児にもうけると思うな。
福助のお園は、白歯のまま年を重ねてしまった女の異形なかんじはあったけれど、もうちょっとずっしりしゃっきりやっても大丈夫だと思う。なんだかいつもこういう役のときの福助を観るたび、惜しいと思う。
吉之丞のお幸、前半の品を失わず軽口を言うやわらかさといい、後半のご後室の品格といい、絶佳。

  • 吉田屋

他愛ないおとぎばなしだけれど、殊に、仁左衛門の吉田屋に限って、このお芝居は私にとってものすごく好きな芝居になります。なんという嘘八百。芝居の嘘の楽しさを隅々まで楽しめます。仁左衛門の伊左衛門は泰然として、しかも愛らしく、しょーもないぼんぼんなのに安心感が漂う。上方の若旦那というのはこういうものかと思う。
夕霧の玉三郎、なんだか久しぶりにこういう役を観たなあ・・・打ちかけをばさっと広げるたびにファッションショーのごとく客席から拍手と溜息が起こる。
我當の喜左衛門も秀太郎のおきさも役を得ているけれど、我當は膝が辛そうで、落ち着いて見ていられない・・・少しでも快復を願います。
ここで特筆すべきは、太鼓持の巳之助。ええ!?あの、ちっちゃかった巳之助が、もうこんな役を!?と驚いたのだけど、これがなかなか達者でおばちゃんびっくり。さすがに若さは出てしまうけれど、無理があるということもなく、もうすっかり大人の役者なのですね・・・次からは無心に拝見したいと思います。良き成長を見せていただいて心が洗われました。

名作を名優が。だけど・・・今回に限っては、吉田屋の次っていう組み合わせは、どうかと思います。順序が逆ならともかく、ねえ・・・。
すみません、竹三郎などもよかったと思うのですけど、どうにも、純粋に楽しめませんでした。