百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

しょもない男たち

ふじみきさんのツイートから、ふと。

歌舞伎の世界であたしの好きになる男は悉く役立たずのぼんぼん。由良之助とか実盛とかの情理兼ね備えた大人の男も嫌いじゃない、見ごたえあるんだけど、はわわ〜きゃ〜惚れるわ〜!!って感じには、なりにくい。

大奥の御年寄(美女)と密通?のかどで興行元を取り潰されて島流しになって、挙句の果てには発狂した傍迷惑な役者(得意な演目は濡れ場、みたいな)。

  • 藤屋伊左衛門【廓文章-吉田屋】

遊興が過ぎるというので親に勘当されて、ど貧乏になりながらも花街に来て横柄に茶屋の主人を呼びつけて、ロハで入れてもらって遊女と痴話げんかしてるうちに、都合よく勘当がゆるされて遊女も親が身請けしてくれるバカ旦那(演目としても大好き・・・なんつうしょもない話なんだー)。

  • 山崎屋与五郎【双蝶々曲輪日記-角力場】

相撲に入れあげて、贔屓にしている力士をほめられるだけで喜んで、その場で着ている羽織やら財布やらみんな人にあげてしまう、これまたバカ旦那。

  • 山蔭右京【身替座禅】

なんとか浮気に行きたさに、おこもりと称して家来を身替りに仕立てて行っちゃう。それで戻ってきて滔々と家来(実はバレてて奥さんに身替ってる)に向かってノロケるは奥さんの悪口言うわで、結局奥さんにとっちめられる、お殿様。


・・・実は、こういう、準主役以上で徹頭徹尾しょもない男の役は、少ないと思います。ぜんぶ数えても10かそこらじゃないかしら。あとはそれぞれの役の中にちょっとずつ、しょもない風味を持っていたりします(【助六】の曽我十郎とか、かなーり好きですわ)。
現実に、まるごとしょもない男がいたら、そりゃ腹立つだろうけど、しょもない風味がチラッと見えるぶんには、現実でも、もんのすごく可愛い。その、可愛いところを抽出して見せてくれているのが芝居なんだろうけど。

ちなみに、こういう役のほとんどは「つっころばし」って呼ばれるんだけど、つっころばしの代表格である【河庄】の紙屋治兵衛は嫌い。どこが嫌なのかなあと思うに、微妙に甲斐性があるところが嫌なんだと思う。恋に狂わなければ、そこそこ立派な人生を歩んでいたであろうところが。

しょもない男が恋(とか相撲とか)に狂って更にしょもなくなりました。しかしノンシャランというかそんな様子に、誰もが手助けせざるを得ない。男からも女からも、しゃーないなあと溜息つかれつつ好かれている、あの人たちは、不幸も幸せもどっか超越してる。あのまんまの性格でなんとなく人に立てられて、長生きしそう。
あたし、生まれ変わったらそういう男になりたいんだろうなあ。 と、なんとなく思う。おつむが足りない愛すべき男たち(ただイケって言われそうだけど、イケメンじゃないほうがむしろ可愛いよ右京さんとかさ)。