百八記blog

はてなダイアリー「百八記」から引っ越しました。相変わらずの、がさつずぼらぐーたら。

6月の鎌倉

時間が経ってしまいましたが、旅行の後なにかと忙しくなってしまい、やっと写真を整理できたのが今日になりました。約300枚撮ったなかから180枚ぐらいに絞って(って、あんまり絞れてないですね・・・)百八景の「201007鎌倉」にアップロードしました。とても日記に上げきれない量ですだ。
http://f.hatena.ne.jp/kirinsha/201007%E9%8E%8C%E5%80%89/


以下は旅行記。写真枚数は減らすとはいえ、文章かなり長くなりそうなので、お時間のあるときにでも、ゆるゆると読んでいただけますと幸いです。

  • プロローグ

以前から、鎌倉に行ってみたいと思っていました。鎌倉には行ったことがないし、どうせ行くなら写経もしたいし、紫陽花も観たい。紫陽花の時期の週末の鎌倉はひどい人ごみだそうで、そんなところでゆっくり写経なんかできるものかしらん・・・と不安でもあったので、これ幸いと、梅雨の盛りの時期に見当をつけて、2日間の有休を取得。
配偶者も一緒に行こうという話になっていたのですが、うまく都合がつかず、久しぶりの(帰省でも仕事でもない)一人旅です。わくわく。

  • 6/17(木)

行程:東久留米-西武池袋線-池袋-湘南新宿ライン-武蔵小杉-鎌倉-鶴岡八幡宮-ARUKAMAK CAFE(昼食)-吉兆庵美術館-鎌倉-江ノ電-由比ガ浜-浅羽屋本店(夕食)-ダイヤモンド鎌倉別邸ソサエティ(泊)
http://www.hachimangu.or.jp/
http://www.kamakura-soseiji.com/page004.html
http://www.kitchoan.jp/museum/kamakura.html
http://www.kamakuratoday.com/shop/asabaya.html
http://www.diamond-s.co.jp/kamakura/

  • 6/18(金)

行程:ダイヤモンド鎌倉別邸ソサエティ-長谷寺-鎌倉能舞台(素通りorz)-高徳院-和紙「四葩」-鎌倉文学館-由比ガ浜-江ノ電-鎌倉-腸詰屋鎌倉西口店-鎌倉-湘南新宿ライン-渋谷-TEH DARK SIDE OF MUTTONI(LOGOS GALLERY)-渋谷-副都心線-東久留米
http://www.hasedera.or.jp/
http://www.nohbutai.com/
http://www.kotoku-in.jp/
http://www.yohira.jp/store/wasi.html
http://www.kamakurabungaku.com/
http://www.kamakura-soseiji.com/page009.html
http://www.muttoni.net/

  • 旅立ち

前日は残業になりました。そりゃそうか。
朝、仕事に行く配偶者を見送って、やっと旅の準備。一泊の一人旅なので身軽なもの。ただし、この時期なので雨傘が必須。
もう少し早く出るつもりだったけれど、結局、10時頃に家を出ました。
地元、東久留米の家々の紫陽花だって、充分にきれいなのだけど、これから鎌倉で出会えるであろう未知の紫陽花たちが楽しみ・・・

湘南新宿ラインは便利。武蔵小杉駅は新しく、眺めがよい。
乗り換えて、鎌倉に近づくにつれ・・・平日のお昼時なのに、観光客風の人が、ずいぶん多い。一抹の不安。

  • 鎌倉着

鎌倉に着いて駅から出るなり、不安的中。ああああっと頭を抱える。迂闊でした。ふつうの観光客に加えて修学旅行生、歩こうと思っていた小町通は人であふれかえっています。くらり。

じゃあ、二の鳥居から段葛っていうのを歩いてみるか・・・と、こちらの人数は案に相違して、それほどでもない。歩きはじめて、じりじりと首の焼ける感覚に、慌ててスカーフを巻く。梅雨時なので油断して、帽子はハンチングにしちゃったし胸元はばっかり開いているよ(あとで、真夏日だったことを知りました。見事にこんがり焼けたよ!)。

そもそも歌舞伎を観る者として、鶴岡八幡宮へ、いずれ参らなくてはと思っていました。仮名手本忠臣蔵、大序は、ここからはじまるのです。
いや仮名手本忠臣蔵以外にも、様々なお芝居で、鎌倉武士の象徴でもあるこの大社は、重要な場面を担います。
それにしても大序、兜改めの場・・・まさか、この石段ですか?そうですか。こここんなに段数があると思っていませんでしたよ。ぜーはー。駅のコインロッカーに荷物預けてくればよかった。ちょこっと覗くだけのつもりだったから、旅行バッグ抱えて参道などちょこちょこと歩き回り、静の舞を思いつつ舞殿をぐるりとまわり、更には61段の大石段を上がる羽目に。ここ、芝居ならせいぜい5〜6段じゃないか!しかも大銀杏が倒れたため、日影になるものが何もない!
字義通りの汗だくになって上りつき、「八幡宮」の「八」が二羽の鳩の組み合わせになっているところをこの目で確認し、振り返ると、わーっと風が吹いてきました。梅雨の晴れ間、どこまでも明るい、相模の空。実に気持ちがよい。

境内、殊に本宮や宝物殿、お守りの授与所付近など、メインとなるようなところはほとんど撮影禁止でしたので、悪しからず。修復中のところもあったけれど、見事なものでした。彫刻の動物たちの可愛さは、ちょっと言葉に尽くしがたい。
本宮にお参りし、宝物殿をぶらついて、石段を降りて小さな鳩のお守りをいただいて、若宮、白旗神社とまわりました。途中、心惹かれたのは由比若宮遥拝所。ここには建造物ではなく、立派な榊がひともと、植えられています。
見事だなあと思いましたのは、八幡宮を擁する山の緑の豊かなこと。八幡宮を拝そうとすると、自然、山を拝するかたちになります。さきほどの榊もそうですが、段葛といい、大銀杏といい、亀を遊ばせておく池の上に涼やかに実をむすんでいた梅の木などなど、植物の神性を大切にしているように感じました。

くたびれたので、源氏池の休憩所で小休止。そういえばお昼ごはんを食べそこねていました。旅立つときは小町通で食べようと目論んでいたのですが、あの人の多さで萎えてしまって。好物のところてんを啜ってぼんやり蓮を眺めていたら、また元気になってきたので散策を再開。
源氏池は明るくのびやかで、蓮の見事さに目を奪われる。藤棚の下から眺めていると、池のなかになにやら旗が見える。

旗上弁財天でした。ここにいろいろの由来などが書かれていて、源氏池、平家池についてもここで知る。ほほう!平家池に4つの島を作って「死」とする政子の呪詛とな。それはそれは。

ということで参道を横切って、平家池へ。源氏池と比べると、なんとなく暗く造成されている。やるなあ。政子。
参道を横切るとき、「砂糖店」と書かれた大きな石灯籠が気になって写真を撮ったら、参道を渡ってくると対の石灯籠にまた「砂糖店」。最前のは「江戸」、こちらのは「大坂」。なんでお砂糖を売るお店が?と思ったら、文久年間の江戸大坂の砂糖問屋が航海の安全を祈願して奉納したのだそう。なるほど。

  • ARUKAMAK CAFE(昼食)

さて、おなかがぺこぺこです。何か食べましょう、と、相変わらず人の多い小町通に入ってすぐ、右側にハム・ソーセージを売るお店発見。鎌倉ハムもいいけれど、あらまあ、こちらもなかなか。
「腸詰屋」って聞いたことあるけど、鎌倉だったっけ・・・?と、お土産物色のつもりで入ったら、小さな小さなイートインコーナーがありました。試食ついでに、ビールでも飲んでいきますか。「ベーコンソーセージセット」、ビールにソーセージ一本とベーコン、サラダ、パンがついてきます。オリーブやチーズも嬉しい。呑める一皿。湘南ビールが選べなかったのは残念だけど、よく冷えたグラスにハイネケンの生ビールとたっぷり感のあるプレート。これで1000円は嬉しいものです。ソーセージはヴラードヴルストバリアンタをチョイス。美味しかったので、お土産にバリアンタと生ハム購入して、ふらりふらりと散策再開。

  • 吉兆庵美術館

小さなお店の続く小町通に、いきなり源吉兆庵の大店舗が出現して驚く。
ここにあったんですか!
なんとまあ愛らしいお菓子の数々。ふらふらと迷い込み・・・吉兆庵美術館に気付く。
ここにあったんですか!<二度目
覗いてみると、魯山人展。ラッキー。何度か魯山人の器に盛り込まれた吉兆庵のお菓子の写真を見たことがある。さぞかしコレクションが充実していることであろう。さっそくチケット購入して拝見。
お菓子のお店はあんなにお客さんがいたのに、美術館は私一人の貸しきり状態で、それが嬉しいこともさることながら、こちらの展示のすばらしいところは、相応しいメニューを盛り付けて展示していることです(もちろん食品サンプルなんですが)。魯山人の器は料理を盛るために作られたのだから、こういう展示が観たいのですよ。メニューも器も季節に相応しく、説明も照明も多からず少なからず、たいへん、良い内容でした。
ところで、嫌なことを書きますが・・・私がチケットを買って入っていくと、中にいた初老の女性がサッと出て、出掛けに無人のモギリのチラシを物色して行きました。チラシはチケットとともに店員さんが手渡してくれるので、おそらく彼女、人がいないのを良いことに、ふらっと入ってきてチケット買わないで観ていたのでしょうね。チケットについては入り口にきちんと書いてあるので、読めなかったわけではないでしょうに。入場料600円を惜しんで、貧しい鑑賞をしたのではないかと気がかりです。もしそうなら、魯山人が嘆きます。お金が無いなら仕方ないけれど、お土産の袋を手元でがさがさいわせていたので、観光客だと思う。こういうひとがいると昔ながらの観光地が荒れる気がします。

えのでんかわいい。かわいいえのでん。鎌倉駅ホームのゴミ箱も江ノ電カラーでした。
わたくし鎌倉がはじめてなら、江ノ電もはじめてです。鎌倉駅に着いた車両にすし詰めになった人々。16時、ということは、通勤電車のラッシュではないんですよね。改めて、この季節の鎌倉の観光客の多さに驚く。それにしてもぎゅうぎゅうですごかった。明日は我が身なのでしょう。
難なく運転席後ろ側のベストポジションに大人げもなく陣取り、出発進行ーーって、えええ!?江ノ電って、単線なんですか!!!!なんとなく都電のような感じを想像していたので、これは意外でした。ますます愛らしいなあ。

由比ガ浜の駅から徒歩3分ぐらい。わーい着いたー。

…裏口でした。気を取り直して、わーい着いたーー!チェックイン。

名前はちょっとびっくりしますが、それなりにリーズナブルで観光に利便性の高いお宿を探しました。でも、せっかくの女子一人旅を満喫したい!なぬ、ローズプランとな!?アロマボディトリートメントとローズグッズつき。翌日は朝食をランチに変更可能で、チェックアウトは13時。ということは、荷物置いて観光に行ける。それ!それにします!
ということで、ちょびっとぜいたくです。シングルの部屋は無いのでツインにひとり。ゆったりーん。バスローブかわいいーん。じゃプランのローズグッズは、と・・・て、てんこもりです。びっくり。ジャムなんか、うちにあるジャムのどれよりも大瓶ですよ。

さっそくローズティーをいれて一息ついて、館内散策。
浴室は地下。無愛想なドアを開けると、こぢんまりとしていますが、浴槽から滝が見えます。出てきたところにマッサージチェアと牛乳(フルーツ牛乳含む)の自販機。こ、これはちょっと、嬉しいですね。

アロマトリートメントの時間まで3時間ほどあるので、周囲を散策に出ました。ともかくここまで来れば、海に行くでしょう。
まっすぐ行けば近そうだけど、敢えて遠回りしてみる(そして方向音痴の特技「趣味の迷子」になる)。
ぐるっと材木座のほうまで行って、由比ガ浜の海水浴場に沿って歩いてみました。
砂浜を歩くに不向きな靴だったので残念。ビーサン持って来ればよかったな。由比ガ浜は海の家をいくつも建造中で、若者とかカップルとか犬を連れた家族とかサーファーとかがとても似合う海でした。ちょっとだけ地元の海にも似ていた。もちろんその何倍も広いし、洗練されているけれど。しばらく、ぼーっと海を眺めていたら、夕方になってしまいました。

  • 浅羽本店(夕食)

思ったより時間が経っていたので、慌てて戻って、さて宿の方に教わった鰯料理の店を探すも、見つからず(方向音痴)。長谷寺の前のお店が開いていたので、えいやと入ってみました。案内されたお席からは、水琴窟の音が聞こえる。後で調べたら老舗の日本料理店だった模様。鰻が美味しそうだったけれど、ボディトリートメント前にはへヴィー過ぎると思い、レディースセットを注文。どれも丁寧で美味しかったです。茶碗蒸しの上に釜揚げのしらすが乗っているのが、かわいくて美味しくてとてもよい。

  • アロマボディトリートメント

宿に戻って、ささっと入浴。あ、シャンプーとコンディショナーがTSUBAKIの赤だ。ちょっと嬉しい。
上がるとすぐに時間で、パンツいっちょにバスローブ羽織ってマッサージルームへ。ちゃんとした施術室になっていて、アレルギーなど確認して、カルテを書いて、・・・か、紙パンツにはきかえるんですか?
脚のトリートメントは何度も受けたことがあるけれど、全身ははじめてで、ちょっと怯む。ええい、俎の鯉だ、いっちょやっとくれ。どかんとベッドに横たわる。
施術を受けはじめて数分で夢心地に。ダマスクローズの香りは思っていたよりあっさりしていて、日焼けした胸や肩首にやさしい。施術者のてのひらは魔法のように熱くて、触られたところの筋肉のこわばりが溶けていくよう。
部屋に戻って、少し本を読んでいたら、あっというまに寝てしまった。
23時ごろ、就寝。

予定より1時間遅れで起床。目覚ましがセットできてなかったあああああ!!!痛恨のミス。
朝食の予約をした時間に起きてしまったので、慌ててフロントに電話して、30分遅らせてもらう。朝食は、決して豪華でも非常に美味でもないけれど、必要充分。お粥をお願いしていたのだけど、栗が入っていて、ほんのり甘くてやさしい、ちょっと嬉しいお粥でした。しかし添えられたごはんの友が垂涎もので、ひととおり試したけれど、栗入りのお粥だとインパクトが弱まる残念な感じに。次回、泊まるときは白ごはんにしようと決意。

起きたら軽く散歩して、シャワーを浴びてゆったりした気持ちで朝食。開門間もない長谷寺に着いたら、のんびり紫陽花を眺めながら写経の時間を待とう。毎月18日にしか回せないという、経蔵の輪蔵も回させていただこう。
なーんてこと思っていたのに、寝坊で全てが台無しに。開門から40分経った長谷寺、写経の受付開始まであと20分。境内にはもうかなりの人がおりました。
一気に紫陽花の斜面を駆け上って、振り返ると相模湾が光っていました。昨日のような日差しのきつさは無いものの、湿度も気温も高く、みるみる汗みずくに。
紫陽花は、盛りの一歩手前という風情。上から眺めおろしても、下から斜面を見上げても、壮観です。経蔵の裏の斜面にも咲いていて、極楽の色彩とはこういうものかと感じました。

紫陽花も楽しみ、輪蔵も回させていただき、ご本尊にもお参りをして、さて時間ぴったりに写経の受付に並びました。
説明を受け、輪袈裟をお借りして、慈光殿と弁天堂どちらでもというので、こぢんまりとして人の少なそうな弁天堂へ(後で調べたら、18日は写経会ということで慈光殿では僧侶による読経もあったようです。あらら)。輪袈裟をかけ、弁天様にお線香をあげ、筆をお借りして、般若心経を写すのに、一時間半ほどかかりました。

途中、小学生の一団が外を通ったり、会場に誰かが出入りしたりの度に、集中力が途切れます。なんと無力な。
写経後、弁天堂から境内にあるという弁天窟へ。十六童子が祀られているとのこと。それぞれカラフルな蝋燭をお供えできるようになっています。入り口の神様は「宇賀神」って、ええと、ウケモチの神と同一なのかな、穀物をはじめ豊穣をもたらす神様。おまんま食べられるって大事です、蝋燭ともしてお参り。
それにしても、昨日から、弁天様に吸い寄せられるなあ。江ノ島にも弁天様がいらしたっけ。弁天様のお強い地域なのかも。弁天窟の前の紫陽花の陰に、ひっそりといらっしゃった弁天様は、なんとも愛らしかったけれど。

かまくら」という紫陽花に見送られて、混み合ってきた長谷寺を辞す。山門には行列ができていました。

長谷寺を出てすぐのところにある「対僊閣」という旅館は、宿泊候補でした。こうして見るとやはり味がある。

一路、高徳院へ。鎌倉に来たからには、大仏様を見ておきたい。
しかしその途中に鎌倉能舞台もあるはず。この舞台を作られた中森先生には配偶者が授業にて淡いご縁がある。私もその授業につながるご縁がある。そんなことで東京公演を拝見に参りまして、いつかは鎌倉へと思っていました。公演の無い日は見所を博物館として開放しているとのこと。
結論から言いますと、鎌倉能舞台は金曜日がお休みでした。残念、だけど、こちらには配偶者と来たかったので、またの機会を待ちましょう。
この道すがらも紫陽花が美しく、鎌倉はなるほど紫陽花の名所と感じ入る。

色とりどりのバティック(パレオか?)の翻る店。マリオンクレープ(と、そこに群がる修学旅行生たち)。なんとも味のある中華料理店。などの並ぶ道をてくてく歩いて、ほどなく高徳院に到着。
鎌倉の大仏、というのは私には想像できなくて、露天に大きな大仏様が鎮座ましましてるの?しかも、もとから外用に作られたんじゃなくて、大仏殿がなくなったから雨ざらしに?だ、大丈夫?ていうかそのお寺、他の建物はどうなってるの?それは寺院として成立するの?などなど、いろんな疑問がいっぱいなのでした。
ですので、仁王門を見、中に入るとまた簡素な門があり、その手前に「私たちの宗旨」という、平易で短い言葉で教えについて書かれた立て札を見て、ちょっと驚きました。もう、これだけでも、宗教施設として成立しそうではないですか。なんだか良い場所だなあ。というのが最初の感想。

二つ目の門をくぐると、いきなり大仏様のお姿が見えて、思わず「うぉっ」と呟きました。「お、大きい」。
私の後ろから来た人も、全く同じことを呟いていました。そうだよね、いきなり、この距離ででこんなふうに見えるって、予想外だったね。
お参りをした後、胎内に入りました。胎内の拝観は20円。・・・え?って思いました。観光地で、こういう金額を聞いたのは、鳩のえさとか以外では初めてという気がする。
胎内は工事現場というか、古い地下建造物にいるような気分で、見上げると昭和の大改修で補強された首周り、そして背中に開けられた小窓から差し込む光が一層「地下」感を増します。

出てきて、少し木陰で休んでいたら、りすが2匹、走っていきました。ふと見渡せば、ここも山。長谷寺も傾斜のある山でした。昨日の鶴岡八幡宮も懐深い裏山がありました。どうやら、鎌倉は山のあるところ寺社仏閣があるようです。
境内は白砂のなかに小さな庭が点在し、礎石が残っています。ここはやはり、屋根は無いけれど大仏殿なのです。
裏にまわると、うっそりと茂る木立のなかに「観月堂」という、エキゾチックな建物がありました。内部には観音様が安置されているということですが、誰もお参りする人がいません。

  • 和紙「四葩」

高徳院を出ますと、くらっとしました。そういえば、朝ごはんから、何も口にしていません。
あじさいソフトというのを買ってみました。紫芋ソフトと「オバマッ茶」ソフト(ご主人…これきっとあまり修学旅行生には受けませんよ…)のミックスですが、確かに色合いはあじさい。甘い冷たいものを摂取して、ついでにこの店の入り口の燕の巣にぎっしり寄り添ったヒナたちの声を聞いて、また元気になりました。

有名なあぶらとり紙のお店「四葩」があそこか、と通り過ぎようとしたら、すぐ脇に和紙「四葩」というお店が…一人旅のよいところは、こんなとき、こころゆくまで寄り道できるってことです〜。
近づいてみると、どうやら千代紙や手紙用品一般も扱っているようです。それにしても、この店の脇の紫陽花の色と、暖簾の色とのマッチング具合といったら。入りましょう。

店内には感じのよい女性スタッフが二人。文香といい、和紙ハンカチといい、いずれも実用と非実用のあわいで生活を楽しくする感覚に満ちている。それに、あぶらとり紙の店にある喧騒が、ここには無い。文香は自分と友人用、和紙ハンカチは義母や伯母たち用に購入。
これから通りに戻って鎌倉文学館に行こうと思うんですけど、というと、通りに戻るよりこの脇の道を行ったほうが近いですよと教えていただく。ありがたい。気持ちの良い買い物でした。

鎌倉ゆかりの文学者は数多く、またこの館そのものも、鎌倉ならでは。
旧前田侯爵家別邸、まず最初の門からチケット売り場まで、少し坂を上がる。チケットを買って館まで、更に少し上がるのだけど、石造りの隧道があったり、左手には薔薇園があったり。

常設展示ももちろん良かったのですが、展覧会は「高浜虚子 俳句の日々」で、たいへん勉強になりました。展覧会図録購入。
鎌倉文士は鎌倉の人々に大切にされ、また自らも鎌倉を大事に思っていろいろな企画を行ったり、貢献したり。土地と人あって発生する文学というものの不思議を思いました。
それと、戦後の鎌倉のジオラマがとてもよい造りで、鎌倉の地形と寺社仏閣の配置、鎌倉文士の住みようがわかりやすく、また生き生きと想像できるかたちで展示されていました。鶴岡八幡宮の参道は、海からはじまっているのですね。地図では認識していたけど、ジオラマになると地図よりも俯瞰しやすく、この特異な地形をもっと知りたい、歩きたい、との思いを強くしました。
文学館を出て広大な芝生の庭を歩いていると、突然、雨。慌てて薔薇園のアーチで雨宿りしつつ、傘を取り出しました。
薔薇のなかでも言挙げすべきは「春の雪」。この旧前田侯爵家(当時は鎌倉文学館ではなかった)に着想を得た、三島由紀夫の作品名です。この薔薇が、ここで見られたのは幸せです。もうひとつ、「月光」という薔薇、これは間もなく咲くつぼみでしたが、私はいま「月光」ソナタを弾けるようになりたいと思ってピアノを練習しているので、ちょっと嬉しい出会いでした。薔薇の月光も魅力的。それから、鎌倉ならではの「静の舞パート2」・・・ん?パート1があったのでしょうか。あったんでしょうね。

  • 鎌倉

チェックアウト時間ぎりぎりに宿へ戻って、由比ガ浜から鎌倉へ。
さよなら江ノ電。また来るよ。こんどは、もっと長い時間乗ろうと思う。可愛い電車。

鎌倉でJR湘南新宿ラインに乗り換え。てくてく歩いていくところに「腸詰屋」がある。あれれっ?そういえば私、昨日ARUKAMAKで買った腸詰屋のソーセージ…宿に忘れてきた!取りに戻る時間は無い。明朝食べよう思っていたのにー。
こちらでもう一度、同じ商品を購入。しくしく。ついでに他の人へのお土産も購入できたから、まあよしとするか。

またね。鎌倉。

  • 渋谷

ソーセージを取りに戻れなかったのは、ムットーニシアターの15時からの公演に間に合わなくも無い時間だったので。何度かムットーニの作品は見ているのに、ご本人のご口上を生で聞いたことが無いのです!残念!
渋谷に着くと、帰りに使う副都心線にほど近いコインロッカーに荷物を置いて、地上へ。ロフトへ向かう間、雨ぱらぱら。
負けるもんか!と走ったのですが、残念、15時の開演には、タッチの差で間に合いませんでした。
気を落ち着けて、17時の公演に狙いを変えます。そういえばこの時間までお昼ごはんを食べていませんでした。
ロフトの8階で焼き魚定食食べながら、だんだん激しくなる雨をぼーっと眺めて、時間になるまで会場となるロゴスギャラリーの向かいのロゴスで立ち読みを。

17時からのムットーニ氏の上演は、素晴らしい体験でした。意外だったのは、必ずしも耽美なんじゃないんですね。俗っ気が、切り口上が、少年気質が、老練な技術と美術と音楽と反応して、昇華する一瞬が見られる奇跡。この上演を見るためだけに、ムットーニのオペラグラスまで買ってしまいました。これでオペラグラス3個目です。どうする気なんでしょうね私は。

  • エピローグ

満足して帰途に。よく遊んだなあ。配偶者と落ち合って、ごはん食べて帰りました。
帰ると留守番電話が点滅。宿から「お忘れ物を」と・・・ああああ!すみません!送ってもらうことになりました。
それで、当分は加工肉に困らない日々でした。

生ハムは、今日まだあります。うふふ。